いざ労災保険を使う前に簡単に覚えておきたいこと【労災指定病院や申請用紙について】




備えあれば憂いなしとはよく言ったものです。

労災保険給付の手続きは複雑ですが、経営者、人事労務管理担当者、従業員は必ず覚えておかなくてはなりません。
とは言え、人間いざという時が来ないとなかなか頭に入ってこないですよね。
そこで詳しい話は後回しにして、いざという時に慌てないように今日はこれだけ覚えて帰ってください。
(私は初めて労災保険の申請をした時、病院と労基署を何度も行ったり来たりしてしまいました。)

3種類の労働災害
・業務災害(業務中の災害)
・通勤災害(通勤中の災害)
・第三者行為災害(交通事故など加害者に賠償責任が発生する災害)
その中でも今回は業務災害についての解説です。

これだけは覚えとけ!日本一簡単な業務災害の注意事項

以上です。

・労災指定病院でなくても給付はされますが、その場合医療費は100%立替えし、支払いの証明書を添付するなど、手続きが複雑になります。

・労災指定病院でない場合、※7号用紙に会社と病院の証明をもらって自分で労基署に提出しなくてはなりません。(指定病院の場合は病院が労基署に提出してくれる)
(OCR様式)療養補償給付たる療養の費用請求書_業務災害用(様式第7号(1))-厚生労働省
(OCR様式)療養補償給付たる療養の費用請求書(薬局)_業務災害用(様式第7号(2))-厚生労働省

・会社の証明は必要ですが、何らかの理由で証明できない場合は不要です。所轄の労基署労災課に相談してください。

病院内ではなく薬局に処方箋を持って行って薬をもらう場合は、病院と薬局でそれぞれ1枚ずつ5号用紙が必要です。

もう少し詳しく解説しますね。

労災保険の基本

労災保険は大前提として「労働者のための災害保険」です。受給するのは当然、労働者本人ですので労働者本人が申請する必要があります。
多くの会社では怪我をした従業員に負担を掛けないように、本人に代わって手続きを進めてくれるわけです。
「なんで申請しないんだ!さっさとしろ!」みたいな誤解が生まれないように覚えておいてください。(もちろん会社側は速やかに対応するべき)

労災保険は労働者を1人でも雇用したら強制的に加入する保険ですので、従業員のいる会社で「労災保険に加入していない」という事はありえません。
会社が加入手続きをしていなかったり、保険料を未払いの場合でも被災者には労災保険の補償がされます。(労災認定された場合)

1.労災指定病院で診療を受ける

多くの病院が労災指定病院に指定されていますが、指定されていない病院もあります。
その場合でも労災保険は適用されますが、保険金の流れが違うため手間が掛かります
どうしても指定外で通院したい病院がある場合を除き、労災指定病院への通院をおすすめします。
▼こちらから検索できます。
厚生労働省-労災保険指定医療機関検索

労災指定病院とその他の病院
・労災指定病院
申請書類を提出 → 無料で診療 → 病院が国に請求
・その他の病院
申請書類に記入してもらう → 医療費を100%支払う → 本人が国に請求 

2.労災保険給付の申請書類を用意する(労災指定病院用)

理想的には先に書類を用意してから1.病院に行きたいですが、労働災害ですから緊急である場合がほとんどですよね。
まずは治療が優先ですから、病院に行って治療を受けましょう。
(労災の場合には健康保険は使えないので書類を提出するまで100%負担になります。書類を提出すると病院から支払った費用を返してもらえます。)

上でも触れましたが、5号用紙を用意します。
厚生労働省のホームページからダウンロードできるので、迅速に対応するため会社に常備しておくと良いでしょう。
(OCR様式)療養補償給付たる療養の給付請求書_業務災害用(様式第5号)-厚生労働省


被災者本人がすぐに自筆できない状況は十分に考えられるため、可能な限り会社側で記入してあげるとスムーズです。
本人の自署でない場合には印鑑が必要になります。
病院の情報を記入する欄は、病院の署名は必要ありません

注意して欲しいのは病院で薬が出ない(処方箋をもらって薬局に行く)場合には薬局にも用紙が必要な事です。
この場合にも労災指定の薬局であるかを確認する必要があります。(指定薬局なら5号用紙、指定外薬局なら7号用紙)

基本的には病院と薬局で2通の申請用紙が必要な場合が多いです。

3.5号用紙を病院に提出する

労災指定病院ではない病院の医療費給付や、休業補償の給付と違うのは、労災指定病院は病院が国に請求してくれる事です。

したがって記入した5号用紙は病院に提出します。労基署の証明が必要ないので、会社と本人の記入だけで手続きは終わります。

初期の診療などで自費で立て替えていた分があれば、用紙と領収書を渡せば引き換えに返してもらえます。

院外薬局でも流れは同じです。初期に自費で立て替える場合は必ず領収書を取っておきましょう

病院を変更したい時

更に設備の整った病院で精密検査をしたり、通院の都合(最初に行った病院が事故現場の近くで、自宅から遠く通院は難しいなど)で病院を変更する場合には病院の変更届が必要です。

この時、もう一度5号用紙を記入するのではなく、6号用紙を使います。
療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届(様式第6号)-厚生労働省

流れは前述した指定病院の手続きと同じですが、ここでまた注意して欲しいのは病院で薬が出ない(処方箋をもらって薬局に行く)場合には薬局にも用紙が必要な事です。
薬局も変更するのであれば6号用紙が必要です。

労災保険の休業補償について

休業補償は労働災害による怪我や疾病で働けない期間の収入を補償してくれる制度です。
こちらもまず簡単に説明して、後から詳しく解説しています。

これだけは覚えとけ!日本一簡単な労災休業補償の注意事項

  • 休業補償の給付に必要な書類は8号用紙 → (OCR様式)休業補償給付支給請求書(様式第8号)-厚生労働省
  • 休業補償が給付される期間は休業4日目から(3日までもらえません)
  • 補償される金額は給料の80%
  • 休業が必要な期間は医師の判断が絶対である
  • 会社から給料を受け取った場合には給付されない
  • 休業期間中でも社会保険は徴収される

 

もう少し詳しく解説していきます。

休業補償の給付に必要な書類

上でも触れましたが、8号用紙が必要になります。

(OCR様式)休業補償給付支給請求書(様式第8号)-厚生労働省

医療費の給付(指定病院)と違うのは会社の証明と自分の情報、そして病院の証明を記入して労基署に提出する事です。
(病院の証明に料金が掛かる場合、1回目に限り証明料も保険で支払われます。)
本人の代わりに会社が手続きをする場合には委任状が必要です。

休業補償が給付される期間について

休業補償が給付される期間は休業4日目~医師が就業可能と判断するまで

となります。3日間は支払われないので会社と相談してみてください。(労働基準法では会社に支払い義務があります。)

休業補償の金額について

休業補償が給付される金額は療養前3ヶ月の平均賃金を基に算出されます。

平均賃金の60%が休業補償給付として、20%が特別支給金をして支払わるため、合計80%が支給されます。※ボーナスは除きます。

便宜上、療養前の3ヶ月を各30日(実際には31日だったり28日だったり)、月給30万円として計算してみましょう。

30万円×3ヶ月÷90日×0.8=日額8,000円

ここで算出された日額×療養日数が給付額となります。

休業期間中の社会保険について

うっかり気付かない事が多いのですが、休業期間中でも社会保険は徴収されます。
鬼のような制度ですが、会社は働けない従業員の社会保険料、本人は出ても80%しか補償されない給付金の中から社会保険料を支払わなくてはなりません。
仮に月給30万円で1ヵ月療養した場合、24万円前後が給付され、その中から5万円前後の社会保険料を支払う事になります。
なかなか辛いですよね。全くお得な要素はありません。

労働災害には日々細心の注意を払うと同時に、いざという時のため民間保険会社の所得補償保険も視野に入れておくべきです。

※本記事で紹介した用紙は全て厚生労働省のホームページからダウンロードできます。

労災保険給付関係請求書等ダウンロード -厚生労働省

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